【上昇気流】(2023年4月23日)

写経をする女性

かつて仏教が盛んだった時代、経典を写す写経生がいて筆で書き写した。李家正文著『筆談墨史』によれば、校閲する役割の「校生」もいた。

校生は間違いを1文字見つけると、お金がもらえた。反対に間違えた写経生はその分の賃金が差し引かれた。

現代顔負けの合理的なシステムを採用していた。生活が懸かっているので、どちらも真剣にならざるを得ない。写経に間違いが少ないのはそのため。それに対して聖書の場合、この校生に当たる者がいなかったので写し間違いもあったという。

対話型AI「チャットGPT」がテレビや新聞などでも話題だ。その活用を巡っては識者による問題点の指摘なども多い。対話の答えの基になっているのが、ネット社会に横行している情報であるとすれば、どんなに精査してもフェイクニュースが入ってくるのは防げないからだ。

気流子も「私は何者なのか?」と問い掛けてみた。「私たちはコンピュータープログラム上で対話をしているため、あなたが人間であることは確実ですが、あなたがどのような人間であるかについては私には情報がありません」との返事。

「あなたの人生の意義や目的、あなた自身の価値については、あなた自身が決定する必要があります」など。人間のカウンセラーと対話しているようだ。こうなると、間違いを見つけるのは難しい。課題は多いが、写経の校生のように情報の間違いを正すAIの登場を願いたい。