
ロックというと、既存の社会秩序の否定や破壊、新しい生き方への宣言といったイメージがある。
だから、コンサートホールなどの施設で演奏を行うよりも、野外の会場で公演するのが似合っている。
権威への反抗や束縛からの自由を野外会場はそのまま象徴しているとも言えるかもしれない。
しかし、時々、ロックなどの激しい音楽が、意外と寺院や神社境内などの伝統的な宗教施設で開催されることがある。
その意味では、京都や奈良の寺社で行われるロックは、取り合わせそのものが違和感を覚えてしまうが、案外、それがそうでもなく、似合っている面がある。
静かな闇に浮かぶ寺社建築が、ロックの音によって、新たなハーモニーを生んでいるというイメージ。
それは音楽そのものがその深層に宗教的なメッセージに通じるようなものを持っているせいかもしれない。
もともと宗教と音楽は切り離せないものがある。祈りや神楽などの儀式に使う太鼓や笛やひちりきなどの楽器で奏される宗教音楽も、ある意味では原始的な音楽そのものであるといっていい。
宗教音楽は、その時代にあっては古典的なものではなく、伝統を破壊して新しいメッセージを訴えるポストモダン的なものだったと考えられる。
ならば、ロックのコンサートが寺院で行われるのもそれほど違和感がない。
(鷹)



