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イラク戦争から20年が経過した。あれこれ考えていると、宗教学者の山折哲雄さんの言葉がよみがえった。それは「一宿一飯の恩義」である。こう言うと、まるで博徒のようであるが、2001年の同時多発テロで傷ついた米国の対テロ戦に日本はどう臨むのか、その心持ちである。
同年9月11日の夜、ジョージ・W・ブッシュ大統領はテレビ演説で、旧約聖書の一節を引いて国民に忍耐と勇気を呼び掛けた。「死の陰の谷を行くときも わたしは災いを恐れない。あなたがわたしと共にいてくださる」。紀元前10世紀にイスラエル王国を建設したダビデ王の詩篇である。
そこから対テロ戦が始まり、イラク戦争に至った。日本は米国を支持し復興支援に自衛隊を派遣したが、一部から批判が起こった。
このとき山折さんは、戦後日本が日米同盟によって経済の繁栄を享受してきた、その恩義だけは忘れまいと自分自身に言い聞かせてきたとして、こう述べた。
「言ってみれば一宿一飯の恩義である。その道徳的緊張感を亡失するとき、日本は日本でなくなる。日本人は日本人でなくなる。その結果日本人はその最良の倫理感覚を宙に放り投げてしまうことになる」(司馬遼太郎、山折哲雄著『日本とは何かということ』NHKライブラリー)。
恩義を忘れて義理に背く忘恩負義の国になれば、有事にいったいどの国が助けに来るというのだろうか。人もまたしかり。きょうからの新年度に考えてみる。



