三方よしのレモングラス精油  インドネシアから

アロマセラピーなどでおなじみのエッセンシャルオイルは、植物から抽出される精油だ。インドネシアはその精油の輸出で世界第4位だ。レモングラスや生姜(しょうが)、クローブなど40種類以上の植物から精油が作られている。

国内需要も結構あるものの、美容やアロマセラピーで使われているわけではない。インドネシアにおける精油は、治療用というのが一般的で、病気やけがなどに使われる。

最近、その意外な使われ方が注目されるようになった。遺跡保護に薄めた精油が使われ、効果が上がっているからだ。ジャワ島にある世界遺産ボロブドゥール寺院は、1200年前に建立された世界最大の石造りの仏教寺院だが、長年、湿度が高く熱帯ならではのコケの繁殖に悩まされてきた。放置したままだと仏像のレリーフが崩れてしまう。

これまでは農薬を使ってコケを除去してきたが、石に悪影響があるだけでなく周囲の住民や観光客の健康被害も懸念されていた。ところが近年、レモングラスの精油がコケ除去に効果があることが判明した。

農薬使用時には人体への健康被害を避けるため、観光客の立ち入り禁止措置が必要だったが、今はさわやかなレモングラスの香りが人気にもなっている。

レモングラスは、痩せた斜面でも育ち根茎でどんどん繁殖していく世話いらずのハーブだ。これを刈り取る地元の農家にもキャッシュを落としているのだから恵みは大きい。インドネシア版「三方よし」の話だ。(T)