【東風西風】沈金で卒業記念を制作

輪島塗

伝統工芸の輪島塗が盛んな石川県輪島市で、今春、小学校を卒業する6年生が、輪島塗のパネル制作に挑戦した。パネルは1辺12㌢と13㌢余りの長方形の2種類で、表面に黒い漆が塗ってある。

そこに上絵を描き、専用のノミで線を彫り進めたり、ノミの刃先を並行に当てて、漆を薄く削ってぼかしの技法で描く。

図柄は家族の日常の様子や小学校の行事、打ち込んだスポーツ、飼っているペットなど自由で、作業は去年12月に職人の指導を受けながら、彫った溝に金粉を埋め込み完成させた。

金粉をかけた後に、表面をきれいにすると、自分たちが描いた作品が出てきた。子供たちは自作を手に、得意げに見せ合っていた。

先月中旬には、県輪島漆芸美術館で市内九つの小学校の、併せて121人の作品が並んだ。順に作品を見ていくと、ノミは日頃使い慣れていないだけに、線がたどたどしい作品もあるが、それぞれ個性的で一生懸命に取り組んだ跡が見て取れた。

この取り組みは、次代を生きる児童に輪島塗に触れる機会を設け、地場産業に親しんでもらい、さらに後継者を育てたいとの目標もある。

児童たちの感想をみると、「沈金(ちんきん)は楽しかった」「とてもきれいに出来た」などがあり、意義ある体験になったようだ。

彼らの中から、次代を担う職人や作家の誕生が期待されている。

(仁)