朝の日差しが暖かく、イスラエルにも新緑の香りが感じられる季節がやって来た。
砂漠色だった山や丘には一面に緑のじゅうたんが敷かれ、放牧された牛たちが柔らかな新芽をはんでいる。アーモンドの花が日本の桜のように満開だ。菜の花の黄色が心を弾ませ、所々に鮮やかな赤いアネモネの花が映えて目を引く。
山へ行き森の中に入ると、木々の間には淡いピンクや白色のシクラメンの花がたくさん咲いていた。イスラエルでは、ソロモン王の王冠の花という伝承がある。
紀元前10世紀、美しい王冠のデザインを探していたソロモン王が、岩陰で健気(けなげ)にこうべを垂れていたシクラメンの姿の謙虚さに感動して、シクラメン花の王冠を作ったという説や、草花好きのソロモン王を見たシクラメンが恥ずかしさのあまりにうつむいたという説もある。
アラブ人の友人から、山で摘んできたというシクラメンの葉を頂いた。パレスチナの伝統料理ドゥワリ(ぶどうの葉で米とひき肉を包み炊いたもの)を作る時、シクラメンの葉も使えるのだという。ちなみに、品種改良された観賞用のシクラメンには毒があるので食べることはできない。
わが家では、頂いた大量の葉を鶏肉と一緒に煮付けて、ごはんのおかずにした。初めて食べたが、シャキシャキとした歯応えがあって思いのほかおいしかった。
花が美しいだけでなく、葉までおいしいなんて、ますますシクラメンが好きになった。(M)



