【上昇気流】(2023年2月22日)

課題のレポートを書いている女子

大学の非常勤講師をやっていたころ、レポートの提出を求めた。無論、単位と直結する。多くのレポートを読むうちに「見事」と言うしかないものがあった。内容もそうだが、表現(文章力)も驚くようなものだった。

一応最高点は付けたものの、逆に見事さが気になって熟読してみると、出来のいい部分とそうでないものがはっきり違っていることが見えてきた。「誰かの文章を盗用した可能性が高い」と思って調べてみたところ、文庫の解説であることが分かった。

手元にある文庫と照合してみると、レポートの文章と一字一句違わない文章が複数箇所見つかった。早速大学経由で本人に再提出を求めたところ、大急ぎで書いたと思われるレポートが届いた。単位の認定はOKだった。

昨年11月末無料公開された「チャットGPT」というシステムは、レポートであれラブレターであれ、ビジネス上の書類であれ、どんな文章でも人工知能(AI)が執筆を代行してくれるという恐るべき代物だ。

米国の大学教員も「学生のレポートが多くの割合で顕著に上昇した」と驚いているのをテレビで見た。

驚くべきAIが登場したものだが、チャットGPTは正確性に疑念があるとの指摘もボチボチ出始めている。だが、多少のミスがあったにしろ、「文章を書いてくれる」という機能の影響力は大きい。そんなものを必要としない人にはどうでもいい話だが、関係者にとっては深刻な問題には違いない。