【上昇気流】(2023年2月17日)

仙台市上空を浮遊する物体=2020年6月17日、仙台市青葉区

米本土に飛来し撃墜された中国の偵察気球と同じような気球は、日本でもたびたび確認されていた。2020年に宮城県で確認された時、当時防衛相だった河野太郎デジタル相は「安全保障に影響はない」と断言。気球の行方について問われ「気球に聞いてください」ととぼけた。

この発言を国会で追及された河野氏を擁護する浜田靖一防衛相の発言も呆(あき)れるものだ。「国民の生命、財産に直ちに危険が及ぶような事象は確認されなかったことを踏まえた発言だった」と言うが、将来の危険を高めた可能性についての反省がない。

偵察気球と推測される物体は、21年9月、青森県八戸市にも飛来している。八戸の近くには在日米軍や航空自衛隊の三沢基地がある。沖縄への飛来も報告されている。沖縄にも在日米軍の重要拠点がある。

直ちに危険が及ばなかったとは言え、不審点は残った。その狙いに迫り得なかったのは、要するに想像力が不足しているのである。高まる中国の脅威への認識や国防への危機感が乏しいのである。危機感を持って真剣に取り組んでいれば、自然と想像力は働くものだ。

わが国領空を正体不明の飛行物体に侵犯されたことを重大視しなかったのだ。主権の尊厳に対する意識が欠如していたのだ。

政府は、領空侵犯した気球や無人機を撃墜できるよう自衛隊法の運用の見直しを検討し始めた。早急に武器使用の要件を緩和すべきだ。日本の上空をスパイの天国にしてはならない。