
近所にバイパスの工事現場がある。10年ぐらい工事が続いている。いつ完成するかは分からない。あきれるほど長い工事だが、特に不便を感じるわけでもないので、関係者に完成時期について聞いたことはない。
工事の途中、遺跡が見つかった。無論、工事はストップ。3年程度調査を行ったようだが、価値のある遺跡ではないことが判明したらしい。「何にも出なかった」との発表もなかった。お金と時間のムダだけが残った。
考古学者に質問したことがある。「工事中に遺跡らしきものが見つかった場合、面倒だからという理由で埋め戻して工事を続けるケースはあるだろうか?」という趣旨の問いだった。
回答は「そういうケースはあるだろうが、その後工事が終わってしまえば、もはやどうすることもできない」というものだった。
「そんなものだろう」と納得するしかなかった。バイパス工事は公共事業だから、金も時間もかけてキッチリ調査する。だが民間の小規模な工事は、そんなふうにはいかない場合もあるだろう。それはそれでもっともな話だ。
遺跡の発見は、考古学・歴史学上の重要なポイントになるケースがある。歴史の記述が変わってしまうことさえある。関係者が遺跡らしきものを埋め戻したまま工事を続行させた100年後、遺跡の発見につながることだって考えられる。長い目で見れば、1000年後に発見される遺跡も珍しくない。それもまた「歴史の面白さ」には違いない。



