【上昇気流】(2023年2月3日)

「観世音菩薩坐像」=撮影日時不明(韓国政府提供、AFP時事)

長崎県対馬の観音寺から韓国人窃盗団によって盗まれ韓国に持ち込まれた県指定文化財の仏像は、日本側に所有権があるとする判決を韓国の大田高裁が下した。仏像は「略奪や盗難など正常でない形で対馬に渡ったものとみられる」とし韓国側の寺の所有権を認めた一審判決を覆すものだ。

この「観世音菩薩坐像」がどのような経緯で観音寺に収められたのか断定的なことは言えない。いずれにせよ犯人の有罪は確定し既に刑期も終えているというのに、仏像が10年以上も返還されないのは異常である。

2002年に兵庫県加古川市の鶴林寺から、重要文化財の高麗仏画「阿弥陀三尊像」が韓国人窃盗団によって韓国に持ち込まれた。犯人たちは捕まったが、仏画は既に売られ行方が分からない。犯人たちは「倭寇に略奪されたもの」と主張したが、寺には倭寇の時代より遥(はる)か昔に仏画を修復した記録が残っている。

鶴林寺は高句麗からの渡来僧・恵便を初代の住職として創建された「播磨の法隆寺」とも呼ばれる古刹(こさつ)。寺伝によると、聖徳太子も恵便の教えを受けるために寺を訪ねた。渡来人ゆかりの日韓友好の寺である。

この事件に心を痛めた在日韓国人2世の鄭光均さんが、ソウルで記者会見を開き、仏画の返還を求めた。しかし、この訴えも韓国の人々には十分に届いていない。

問題の根底に反日であれば何でも許される「反日無罪」がある。今回の判決が、その変化の表れであることを願う。