【上昇気流】(2023年2月2日)

ナマケモノ

映画「アマゾン大冒険」というネイチャー・ドキュメンタリーが日本で公開されたのは2015年1月のこと。フランス・ブラジル合作映画で、主人公であるサルの大冒険を通して、アマゾンの大自然を描いていた。

昆虫から猛獣まで70種類もの動物が登場し、自然保護の先端技術も垣間見せてくれる。日本版監修者は動物行動学が専門の新宅広二さん。主人公に演技指導はないが、頑張ったり、挫(くじ)けたりする。

新宅さんは「環境教育の最高の教材になります」と語るとともに「最後のアマゾン映画になるのかもしれない」と語っていた。森林破壊が進行していて「10年後20年後に作ろうと思っても、環境がなくなっている」からだ。

10年もたっていないが、その危惧は現実になりつつある。アマゾンの熱帯雨林は38%が「劣化」したという(小紙1月29日付)。ブラジルのカンピーナス州立大学の研究チームが、米科学誌「サイエンス」に発表。

状況は違法伐採や干ばつで予想以上に悪化しており、昨年1年間で1万573平方㌔の森林が消失した。これは過去15年間で最大で、日本の岐阜県の総面積に相当。19年7月、前例のない大規模な森林火災が起きて以来、毎年「史上最大」が繰り返されてきた。

大規模に伐採されると、外縁部から風と光が入ってきて乾燥し、火が付けば大規模火災に。ブラジル新政権は環境保護政策を打ち出しているが、温暖化は深刻化し、世界全体の問題なのだ。