【上昇気流】(2023年1月31日)

フィリピン・マニラ首都圏にある入国管理局の収容所で拘束されている渡辺優樹容疑者(国家捜査局提供・時事)

全国で相次ぐ強盗事件で、日本人の男4人が、身柄を拘束されているフィリピンの入管施設から指示を出していた可能性が浮上している。フィリピンを拠点に特殊詐欺事件を起こしていた70人近い日本人グループの幹部とみられる。

海外で情報を収集し、電話をかけ、そして日本にいる「出し子」への指示を出す。実行犯はSNSで「闇バイト」に応募する。そういった特殊詐欺の手口を応用したようだ。

同グループは2017年から19年にかけて日本の高齢者ら約2300人から計約35億円を詐取した疑いがある。19年に「かけ子」三十数人は拘束され日本に送還されたが、渡辺優樹容疑者ら幹部はフィリピンで拘束されたままだ。

産経新聞によると、フィリピンの入管施設は職員の腐敗が横行し、賄賂を使えば通信機器の入手もでき、オンラインカジノの運営も黙認されている。日本では想像がつかないが、グローバル化とIT化の思わぬ落とし穴である。

収容者の中には、母国で裁かれるのを免れるため、外部協力者を利用し、暴行や詐欺などの罪で告訴させる者もあるという。司法手続きが正式に始まれば、母国への送還手続きが停止されるからだ。渡辺容疑者も暴力事件で刑事被告人となっている。

日本側は渡辺容疑者らの身柄の引き渡しを求めている。フィリピンのレムリヤ法相は「来週予定されているマルコス大統領の訪日までに何とかしたい」と語っている。本当に何とかしてもらいたい。