
「怖いね」「ホント物騒」――。そんな会話が周辺で聞かれる。東京・狛江市では90歳の女性が殺害され、家の中が物色された。こうした強盗事件が首都圏や西日本で相次いでいる。治安を巡る潮目が変わったようだ。
首謀者はインターネット上の「闇バイト」というサイトで「共犯者」を募り、犯行に及んでいた。同様の事件は過去にもある。朝日新聞の拡張員らが闇サイトで仲間を募り、仕事帰りの女性を拉致して殺害。金銭を奪った後、遺体を山林に遺棄した凶悪事件だ(2007年、名古屋市)。
闇サイトでは殺人や誘拐請負などの有害情報が「殺○、誘○」といった巧妙な表現で勧誘していた。利用者にはひったくりの共犯者を募っていた少年や自殺サイトで知り合った男女3人を殺害した男もいた。
ネット上の仮想空間を介せば、残忍さがより強まるようだ。名古屋事件ではハンマーで頭を数十回殴り、首をロープで絞めて殺害。狛江では素手で激しい暴行を加え多発外傷で死に至らせている。
治安の潮目が変わったのは安倍晋三元首相銃撃事件からだろう。加害者に「理由」があれば殺人も容認されるかのような風潮が世間を覆っている。闇サイトに引き寄せられる加害者にも手前勝手な理由があるに違いない。
ネット上には銃の製造法が堂々と載っている。政治は宗教団体に拳を上げてもテロ対策や有害情報には沈黙だ。「怖い社会」をもたらしているのは政治の不作為と思えてならない。



