
NHKBS1で「銀嶺の空白地帯に挑む~カラコルム・シスパーレ~」という番組を見た。再放送だったが、見逃した番組を見ることができるというのは、失くしたものを見つけたような喜びだ。
見終わった後、困難さの極致に挑む、新しい時代を示す登攀(とうはん)形態だったと、深く感動した。舞台はパキスタン・カラコルムのシスバレー(7611㍍)北東壁。登頂日は2017年8月22日で、翌年2月に放映された。
こうした登攀では、撮影自体がさらに困難であるはずだが、2人の登頂者、平出和也さんと中島健郎さんは山岳カメラマンでもあって、カメラを頭にセットしたり、撮り合ったりして、行動を記録。
新しい形態というのは1人2役のことで、それゆえ画像に残せたのだ。気温はマイナス20度近く、切り立った雪壁で、登攀は困難を極めた。中島さんが5㍍滑落したり、狭いテント場に落雪があったりもする。
見ていてハラハラドキドキ。限界に来ているのにかすかなゆとりさえ感じさせる。この初登頂で翌年、フランスのピオレドール賞を受賞した。6日間で消費した食料は12食。1日2食で、湯を掛けて作る雑炊だった。1日分が500㌔㌍。
この小食にも驚かされる。高所登攀を目指しての訓練の賜物(たまもの)だったのだろう。2人の経歴を見ると、数々の登山チームの撮影を担当してきて、カメラマンとしても頂点に立った人たちだと分かる。繰り返し見たいドキュメンタリーだ。



