【上昇気流】(2023年1月23日)

昨夏、ラニーニャ現象などの影響により異例の早さで梅雨明けが発表された四国の瀬戸内海沿岸地域をその後訪ねたが、水不足が心配された。

この辺は大王製紙など多くの製紙企業が工場を構えており紙の街として知られる。それがこのまま水不足の状態が続けば、紙の生産に影響が出かねないと聞いた。水の豊富な瀬戸内地域で、昔には思いもよらなかったことが起きている。

目を海外に向けると、最先端産業でも水問題が発生しており、その一つが台湾の半導体。台湾経済を支え、中国の侵攻を逃れるための経済安保の重要な戦略物資だ。台湾積体電路製造(TSMC)は世界一の半導体生産を誇る。

半導体製造には大量の水、それも良質の水が必要で、雨量の多い台湾はその条件が揃(そろ)っている。ところが昨年の日照りで、台南のTSMCの幾つかの工場では稼働を続けるのに他地域から水を運び込む手続きを取らざるを得ないという。これも意外な事実だ。

スイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、世界各地の水資源の問題が話題となった。中国の水不足は特に深刻で、水量低下とともに工業化による水質汚濁が進み、飲用水の地下水からのくみ上げが年々難しくなっているという。

中国は周辺各国の河川の水源を利用しており、今後、水資源の争奪戦が激しくなりそうだ。国連は以前から「21世紀は水の世紀」と警告してきたが、日本でも水確保の恒常的な対策が必要だ。