
沖縄に移住して1カ月、落ち着いた休みが取れたので、糸満市の沖縄県平和祈念公園に行ってきた。沖縄戦の歴史に詳しい知人が案内してくれることになったからだ。
平和祈念公園は、太平洋戦争の犠牲者を追悼し平和を祈るために県が整備した公園で、本島南部・摩文仁(まぶに)の丘に位置する。この場所は「沖縄戦終焉(しゅうえん)の地」として知られ、激戦の中を逃げてきた人々が最後に辿(たど)り着いた場所で、追い詰められた多くの尊い命が海岸線や壕(ごう)の中で犠牲となった。
公園に入ってまず驚かされたのはその広さだ。40㌶はあるとされ、東京ドームに換算すると約8・5個分に相当するという。
中でもひときわ大きく目立つ建物が平和祈念堂だ。中には人種や国家、宗教などを超越した平和のシンボルである平和祈念像が鎮座していた。高さ12㍍という巨大な像を生涯を懸けて創り上げた芸術家・山田真山画伯の魂を感じた。
次に向かったのが「平和の礎(いしじ)」だ。ここには国籍や軍民関係なく、沖縄戦で犠牲になった24万人余の名前が刻まれている。私の出身県の欄にも約1000人の名前があった。故郷から遠く離れた沖縄で、祖国を思い死んでいった御霊にただただ頭が下がる思いだ。
御霊の前で目を閉じ静かに手を合わせる。聞こえてくるのは風の音と微(かす)かな波の音だ。目の前の崖の向こうには広大な太平洋が広がっている。この太平洋を挟んで犠牲になった数え切れない魂の上に今の平和な沖縄があるのだと気付く。先人たちも国や家族を守るために命を懸けて戦ったのだ。
平和は力なくしては守ることができないことを、先人たちの重過ぎる犠牲の上に改めて思い知らされた一日となった。
(K)



