【上昇気流】(2023年1月18日)

第一三共が開発し、厚生労働省へ承認申請した新型コロナウイルスワクチン(同社提供)

国内で新型コロナウイルスの感染者が確認されてから15日で3年。この間、ワクチン開発では欧米の大手製薬会社に後れを取っている。

第一三共はこのほど開発中のワクチンについて、国内での追加接種用として厚生労働省へ承認申請した。国内メーカーによるワクチンの申請は塩野義製薬に続き2社目。変異株にも対応しやすいメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンで、実用化されれば国内メーカー初となる。

医療の進歩は日進月歩。再生医療では何といっても2006年に生まれ15年以上が経過したiPS細胞による治療が知られる。製作した山中伸弥京大教授のノーベル賞受賞を機に、政府は再生医療を経済成長の柱の一つに据えて支援してきた。

以来、研究の段階では身体各部の疾患に対し、iPS細胞による革新的な治療法が次々と生み出されてきている。昨年には椎間板の移植治療の有効性が動物実験で確認された。

治験も国内で相次いで始まっているが、残念ながらまだ実用化されたものはない。理由の一つは日本の企業が巨大投資に二の足を踏んでいるため。研究成果と製品化の間にある「魔の川」と言われる障壁を越えられないでいる。

専門家の間では、iPS細胞の研究や治療法の実用化について「今年が正念場」という声も出ている。日本人が主導する卓越した技術だけにぜひ実用化に向けた動きを早めたい。治験の方法やその期間の短縮などの検討も大切ではないか。