【上昇気流】(2023年1月16日)

2022年度内の打ち上げを目指して開発中のH3ロケットの第1段エンジンの燃焼試験=2022年11月7日午後、鹿児島県・種子島宇宙センター(JAXAの公式YouTubeより)

今、大学の工学部では「宇宙」や「航空」を冠した名前の学科に人気がある。優秀な学生が集まるそうで、その関連ゼミにもなかなか入りにくい。昔は自動車工学が人気だったが、宇宙技術への関心が高い。

政府は航空自衛隊の名称を2023年以降、「航空宇宙自衛隊」に変える予定だ。「宇宙を夢見る若者の任官があるかも」と期待する声がある。技術部門でもさらに人材の層を厚くしたい。

宇宙空間は今や最も刮目(かつもく)すべき資源の一つ。また防衛上の重要性が増す中、北朝鮮の例を挙げるまでもなく宇宙経由の攻撃能力はさらに拡散していく様相だ。これに対処するのに宇宙を利用しないということでは国の防衛も成り立たない。

ロケット開発で米国は別格としても、日本は先行する諸国に伍(ご)していくために、官主導の投資、官民一体の技術開発が一層必要だ。2月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)はいよいよ新型ロケットH3初号機を鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げる。

成功すれば、世界最高水準のロケットになる道も開ける。本当に使いやすいロケット造りで打って出て、世界のロケット開発の“軌道”を変えることも可能ではないか。

19年、安倍晋三首相(当時)は空自について「航空宇宙自衛隊への進化はもはや夢物語ではない」と述べた。20年には人工衛星の監視を主な任務とする空自の「宇宙作戦隊」、続いて「宇宙作戦群」(22年)が生まれた。新しい空自を目指したい。