
日本海側とは対照的に晴天が続く関東地方。連休最終日の夕方、隣駅にある喫茶店に行く途中、相模野の風情を残す森の中を散策した。冬の森もなかなかいいものだ。
クヌギやコナラを主体にした森で、すぐ脇を小田急江ノ島線の線路が通っている。小道には枯れ葉が敷き詰められていた。歩くと、ふわふわの絨毯(じゅうたん)を踏んでいるようである。
樹(き)は丈高く、30㍍はありそうだ。すっかり葉を落とした枝々は、冬空を背景に毛細血管のような先端を浮かび上がらせている。子供が小さい頃、この森で夏にはクワガタやカブトムシを捕ったことや、秋の夜に通った時はいろんな虫たちの合唱を聞いたことを思い出す。
しばらく行くと、木の間から差し込んだ夕陽(ゆうひ)が赤々と幹を照らす大きな樹があった。頭上で鳴き声が盛んにするので、見上げると沢山(たくさん)のカラスが枝に止まっていた。路上で餌を漁(あさ)るカラスは嫌いだが、こんなカラスは悪くないと勝手なことを思う。
森を管理する市の環境課と愛好会が立てた掲示板があり、ナラ枯れの対策を講じていることが書かれてあった。カタクリやキンランなど森に自生する花の写真が貼られていた。広さ約2万4000平方㍍、グラウンドを合わせた隣の中学校と同じくらいの面積だが、こんなに豊かな植物相があるのかと感心する。
まだ固い木の芽の内部、枯れ草の下の土の中では、春を待つ生命の営みが続いているのだろう。「斧入れて香におどろくや冬木立」(蕪村)。



