
大晦日(おおみそか)の風物詩と言えば年越しそばだ。年の瀬に新年に期待を馳(は)せながら啜(すす)るそばの味は、普段とは違った深みがある。ここ沖縄では年越しの際、「沖縄そば」を食べるのが主流。沖縄で過ごす初めての年末は、郷に従い沖縄そばを頂くことにした。
沖縄そばの歴史は琉球王国時代にまで遡(さかのぼ)る。中国南部から麺料理が伝来し、宮廷料理に取り入れられたことが始まりとの説がある。一般的に大衆に広まったのは明治以降。当時は「支那そば」と呼ばれており、大正時代に入り「琉球そば」となり、本土復帰後からは「沖縄そば」の名称で親しまれている。
沖縄そばは、そば粉を使って作られる一般的な「日本そば」とは原材料や調理方法が異なる。麺は100%小麦粉から作られ、ダシは豚、かつお節、昆布などからとる。三枚肉やソーキ(あばら肉)、かまぼこなどの具を載せ、刻みネギと紅生姜(しょうが)を添えて食べるのが一般的。どちらかというとそばよりラーメンに近い料理かもしれない。
そば粉を使っていない上に、調理方法がラーメンと似ているとなれば「そば」の定義があいまいに思えてくる。実際に沖縄の本土復帰後、沖縄そばは「そば」として認められず、名称の使用禁止を強いられたことがあった。そこで沖縄生麺協同組合は「沖縄そば」の名称を存続させるべく運動を展開、粘り強い交渉の結果、1978年10月17日に公正取引委員会によって正式に「沖縄そば」の名称が認められた。この日は現在「沖縄そばの日」となっている。
沖縄そばの名前を守るための熱い戦いに思いを馳せ、心も体も温まる良い年越しを過ごすことができた。初めて食べる人は、コーレーグース(島唐辛子を泡盛に漬けた調味料)のかけ過ぎにはくれぐれも注意してもらいたい。
(K)



