【上昇気流】(2022年12月26日)

中国・武漢の武漢ウイルス研究所=2021年1月27日(EPA時事)

「意図的な実験室からの流出とは言わないが、中国共産党がそれを隠蔽(いんぺい)したという事実を否定することはできない」――新型コロナウイルスのパンデミックを引き起こしたのは中国・武漢ウイルス研究所(WIV)からの流出だと考えるかどうかについて、米共和党マイク・ギャラガー下院議員の話(小紙19日付)。米世論の一般的な受け止め方だろう。

2012年、中国・雲南省で新型コロナの始祖ウイルスの感染者が複数確認され、採取されたウイルスの実験がWIVで繰り返されていたことが分かっている。その武漢市内で第1例目の感染者が報告された。

一方、海鮮市場で自然発生的に動物から人間にうつったとの説もある。この間、中国当局はWIVと周辺調査を徹底したはずだが、その結果は一切公表されていない。

現代科学は多くの研究者の調査、実験データを共有・分析して成果を出す手法が主流だ。また科学者らのチームが協力して4万年ほど前に絶滅したネアンデルタール人のDNAを完全解析し、現代人との関係を理解するようなことも可能となった。

だが、この時代にパンデミックの出所一つ確定できないという厳しい現実もある。世界が分断されることで、社会の進歩がいかに阻害されているかを痛切に感じる。

昨年2月、中国で調査を行った世界保健機関(WHO)はその後、WIV流出の可能性を指摘した。中国は拒否しているが、WHOの再度の現地調査を実現したい。