【上昇気流】(2022年12月25日)

クリスマス

きょうはクリスマス。だが、実際は昨日のイブの方が盛り上がる感じがする。新年へのカウントダウンで盛り上がる大みそかと、静かな気持ちで迎える正月との対比を思わせるものがある。

実はきょうは、江戸時代を代表する俳人の一人である与謝蕪村の忌日「蕪村忌」でもある。江戸俳諧の中興の祖と言われる蕪村は、松尾芭蕉の句風にあこがれ、そこへの回帰を願った。蕪村の時代、既に蕉風が廃れている面もあったからだろう。

一時代を画した蕉風も、やがて停滞し新しい流行によって取って代わられるというサイクルを逃れられない。蕪村の俳句は絵画的とも言われているが、絵の方でも池大雅と並び称されたほどの文人画の大家である。

蕪村が高く評価されるようになったのは、明治時代に詩歌の革新を提唱した正岡子規の推奨から。子規の唱えた「写生」も絵画の発想を思わせる。蕪村には風景を見たままに写し取った句が少なくない。

「菜の花や月は東に日は西に」「さみだれや大河を前に家二軒」などの代表的な句もまさに絵画を思わせる風景描写である。そのほかにも、冬の風物を詠んだ「寒月や門なき寺の天高し」「乾鮭(からざけ)も登るけしきや冬木立」などの句がある。

江戸時代の三大俳人と言えば、芭蕉、蕪村、小林一茶。芭蕉が孤高、蕪村が高雅、一茶が庶民的というイメージがある。絵画的な風景を想起させるクリスマスと蕪村は、どこか通じている気がしてならない。