【東風西風】チケットレスの味気なさ

国立西洋美術館

『ピカソとその時代』展を観(み)に国立西洋美術館の窓口で当日券を申し込んだら、コンビニなどで受け取る領収書のようなものを渡された。会場入り口で係員が、そこに付いたQRコードに器械をかざし、はいどうぞという流れであった。

28日終了する東京都美術館の『展覧会岡本太郎』も同じであった。

ひところ前は、展覧会に行って当日券を購入すると、大概はその展覧会の目玉になるような作品を印刷した紙のチケットを渡されたものである。見た目にも悪くないから、観覧の記念に取っておいて、本の栞(しおり)に使ったりしてきた。

そういう風にチケットの半券を使う人は少なくないようで、古本を買うと、たまに昔やっていた展覧会のチケットが挟まれていたりする。

この本を読んでいた人は、こんな展覧会に行っていたのか、と誰かは分からないが、親しみのようなものを感じたりする。

チケットレスは世の流れのようだが、展覧会も実質的にチケットレスにすることで、主催者側は相当の経費の削減にはなるのだろう。しかし、紙のチケットのそういう使い方もあることも忘れてもらいたくない。

展覧会の入場料も新型コロナウイルス禍以降、ぐんと高くなってきた。ちなみに『展覧会岡本太郎』は、一般1900円、『ピカソとその時代』展は一般2100円だ。チケット印刷代くらいケチらないでと言いたくなる。

(晋)