室内でTシャツの時代が終焉? フランスから

ウクライナ紛争の長期化でエネルギー価格の高騰は世界的に避けられない状況だ。今秋はフランスでも穏やかな気候で寒さも厳しくなかったが、徐々に冬の寒さが迫っており、暖房費の高騰の痛みは現実味を増している。

パリ郊外で美容院を営むアデールさんは「電気代が4倍に跳ね上がった。店を続けられるかどうか」と不安を口にする。彼女は「(フランスでは)テロがたびたび起き、次に黄色いベスト運動で毎週末デモが続き、その後にはコロナ禍に襲われ、外出禁止措置で店に来る客が激減した。今度はウクライナ紛争による電気代高騰で店がやれているのは奇跡」という。

フランスは56基ある原子炉のおかげで、電気料金が安く、冬は主流の電気暖房によって家の中は摂氏25度前後に保たれ、Tシャツ1枚で長年、過ごしてきた。政府はこの冬の公共施設内の室温を19度から18度に下げ、夜間は12度に設定するよう通達を出している。

結果的に、今までのように室内で薄着のまま過ごす習慣は大きく変化し、温かい厚手のセーターやタートルネックの服などの売れ行きが伸びているそうだ。さらに省エネのために夜更かしもしない家庭が増え、暖房も長年使っていなかった暖炉に薪(まき)をくべて暖房する準備に入った家が急増し、薪が飛ぶように売れているという。

フランス人のライフスタイルは、ウクライナ紛争で大きな変更を迫られている。フランスに進出した日本の大手衣料ブランド店が売り出す特殊な素材の温かい下着も2007年に進出した当初より注目され、今年は追い風が吹いているようだ。(A)