【上昇気流】(2022年11月21日)

アマゾンの森林農業

欧州で環境活動家らが名画を攻撃する事件が相次いでいる。ドイツで印象派の画家モネの「積みわら」にマッシュポテトが投げ付けられ、ロンドンでは世界的に有名なゴッホの「ひまわり」にトマトスープが掛けられた。

活動家のネットワークがあり、パリのデモでは「地球は死に瀕(ひん)している」と叫び、文化遺産の屋根によじ登る騒ぎもあったという。

以前、元環境庁長官の愛知和男氏が「地球環境問題がどんなに深刻化しても地球そのものはびくともしない。困るのは人間の側。人間のおごりをいかに克服するかがカギ」と話していた。地球の異変を言い立てるのに、文化財を破損するなどは心得違いも甚だしい。

気候変動対策で、化石燃料の新規開発停止を検討し、排出される二酸化炭素の数値を下げることは重要だ。しかし永続的な地球環境保護には、農業、工業で進境著しい途上国と先進国との間に横たわる南北問題の解決など地域間の協調こそ大切だ。

自然と共生する世界をいかに実現していくか。歴史的に西洋は、森林伐採を繰り返しながら社会の地平を切り開いてきた。それに対し、日本は狭い国土でそれなりの水準の生活を営んでいるのに、国土の3分の2は森林で、1億2000万人以上が住んでいる。

くだんの愛知氏はこの日本の姿に「わが国が国際社会でリーダーシップを発揮していけるのは地球環境問題の分野である」と見抜いていた。日本に慧眼(けいがん)の政治家現れよ、である。