エネルギー危機下のクリスマス オーストリアから

11月に入れば、キリスト教社会の欧州はクリスマス一色となる。2020年は新型コロナウイルスの感染者の急増を受け、各地のクリスマス市場は閉鎖された。昨年は一昨年以上に感染者が増加したが、ワクチンの接種が可能となったことを受け、厳しいコロナ規制下の下で実施された。そして今年こそ本来のクリスマス市場を堪能したいと願っている国民は多い。

ところが、ロシア軍が2月24日、ウクライナに侵攻して以来、欧州はコロナ禍から戦時下になり、物価高騰とエネルギー危機が重なって、クリスマスの雰囲気に陰りが見えている。

それでも市民は、仕事の帰りや週末には家族連れで市場に足を向ける。市庁舎前には数十㍍の高さの松の木のクリスマスツリーが立っている。ツリーに飾られた数百個のイルミネーション、広場にはさまざまな店舗がオープンし、市場を訪れる市民や観光客を誘う。

ツリーを飾る置物、鈴、揚げパンのランゴシュ、そしてクリスマス市場では欠かせないプンシュ(ワインやラム酒に砂糖やシナモンを混ぜて温めた飲み物)スタンドからはシナモンの香りが漂う。

ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は「パンデミックがクリスマスの光を消すことはできない」と語ったが、今年はエネルギー危機で電気の節約が叫ばれていることもあって、どこも照明は抑え気味。

パンデミックがクリスマスの光を消すことはないが、ウクライナ戦争によるエネルギー危機で市場や店のイルミネーションに本来の華やかさはない。(O)