和食党でにぎわう店 韓国から

韓国には昔から「日式」と書かれた和食の店が数多くあった。だが、在韓日本人たちの多くにとって、恐らくそういう店に入るのはあまり気が進まなかったと思う。おいしいと思えることが少なかったからだ。ところが近年、韓国人の舌も随分肥えてきたようで、本場顔負けの和食店があちこちにでき、在韓日本人にも好評だ。ただ、和食党向けでありながら、そこは韓国人相手だ。随所に韓国式スタイルを導入する工夫は忘れていない。

例えば天ぷら。近年、若者の間で話題になっている全国展開の天丼チェーン店は、メニューを何種類かの天丼に絞り込む代わりに、ご飯の上に乗っている天ぷらの具一つ一つがとにかく大きく、その迫力は日本ではお目にかかれない。

「アナゴ天丼」を注文すると丼の両端からはるかにはみ出たアナゴの天ぷらが他の天ぷらと一緒にひしめくように盛り付けされてきた。本場の味であることはもちろん、視覚に訴えるところは韓国式スタイルだ。

本場仕込みのすし屋も増えていて、古くからの店も改良を重ねてなかなかの人気だ。L字型カウンターに10席ほどしかないその店のランチはいつも予約客でいっぱい。目の前で板前が握ったすしを一皿ずつ差し出されると、横で食べていた知人は「おもてなしされた気分」と満足そうだった。ただ、ランチは1時間制の2サイクルで、最後は板前も客も時計をにらみながら時間との戦い。これぞ韓国式だ。ああ、最後のデザート、ゆっくり食べたかったのに…。(U)