【上昇気流】(2022年10月4日)

金木犀

どこからともなく漂ってくる金木犀の香りに誘われて、久しぶりに近くの緑道を歩いた。この花の清々(すがすが)しくほんのり甘い香りほど、嗅覚から秋を実感させるものはない。10分ほどの道のりの中で、細かい黄色い花をいっぱい付けた金木犀が点々と4本ほどあった。

ほかにも実が色づき始めた柿の木、たわわに実を付けた棗(なつめ)、赤い実の名も知らぬ木など、秋の訪れを告げている。

赤い実のなる木の名前を調べようと、スマートフォンで撮影し、インターネットのサイトで調べてみたが、よく分からない。同じような赤い実を付け、似たような葉の形をした樹木が沢山あるからだ。樹木に関心が高い人や庭木の専門家であればすぐ分かるのだろうけれど。

それにしても、金木犀の黄、柿の朱、そして幾つもの赤い木の実など、樹木になる実はどうして黄や赤が多いのだろう。目にも美しいからというのは、その結果であって説明にはならない。科学的には色素の働きによるものだろうが、考えてみれば不思議だ。

素人生物学の考えでは、やはり鳥たちが木の実を見つけやすくするためではないか。緑の葉に一番映えるのは黄や赤である。鳥たちについばんでもらい、その種をよそに運んでもらう。

複雑で有機的な体系から成る生物世界だが、その基本には個々の生物の種の保存という明快な目的がある。われわれが自然に接して力や癒やしなどを得るのは、そこに人間が帰るべき普遍の姿を見るからだろう。