【上昇気流】(2022年10月1日)

高齢者

秋となったとはいえ、寒暖の差がまだあり、外出の衣服の選択に迷う。部屋で暑いと思っていても、外に出ると風があって思いがけず肌寒かったりする。逆もしかり。

俳句の季語は、その字の通り季節感を表している。「秋風」という季語の解説を見ると「東風が春、南風が夏の風であるように、秋は西、西南の風が多い。(略)色としては白にたとえられる」(稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』)。

歳時記には、続いて「吹く風に引きしまった緊張と、うつろいゆくあわれを感じる」とある。春風が緊張を和らげるとすれば、秋風は確かに緊張感を強いるようだ。木々が冬に備えて色づき、枯れ葉となって落ちていく。まさに「あわれ」がある。

春夏秋冬を人間の成長、少年から青年、壮年、老年というサイクルに見立てているのだろう。そういえば「熟年」という言葉がある。中年から高齢者に当たる年齢層のことだが、高齢化時代の熟年はまだ働き盛りと言ってもいい。

もう少し違った表現はシルバー世代。どちらにしても、少子化時代の高齢者の再雇用や再活用を肯定的に表現したものだと言える。

その他では、前期高齢者と後期高齢者というふうにも分けている。とはいえ、こうした区分は健康状態や年金などの状況によっても変わる。長寿社会になって、それだけ細かい定義が必要となったということだろう。背景にあるのは、高齢化時代をどのように生きるかという課題である。