【上昇気流】(2022年9月29日)

全米日系人博物館 外観(Wikipediaより)

米ロサンゼルスのリトルトーキョーに、全米日系人博物館がある。日系米国人の歴史を知ることのできる博物館で、写真や文書や工芸品を展示している。とりわけ重要なのは、第2次大戦中に強制収容された人々の記録だ。

「敵性外国人」と呼ばれた彼らの苦しい収容生活の様子は、NHKBS1のドキュメンタリー番組「消えた祖父の謎を追う」でも紹介された。米国で節目ごとに顧みられてきた歴史事件だ。

この博物館に、米国の75カ所で強制収容された12万5000人以上の日系人の氏名を記した慰霊帳が設置され一般公開されている(小紙9月26日付)。収容された家族や先祖の名前を確認できる。

慰霊帳には、思いをはせた来館者が特製のはんこを押せる。収容者の氏名を閲覧できるインターネット上のアーカイブも用意された。強制収容は1942年にルーズベルト大統領が署名した大統領令9066号によるもの。

しかし米政府は88年、これが人種的偏見、戦時ヒステリー、政治的指導力の欠如による誤りだったことを認めて謝罪と補償を行った。レーガン大統領が署名した「市民の自由法」に基づくもの。

発端を探ると、調査委員会とFBI(連邦捜査局)の報告は、日系人は「敵性外国人」でないと結論付けたが、戦時ヒステリーに煽動(せんどう)された人たちがいた。カリフォルニア州検事総長、西部防衛軍管区の司令官、ジャーナリストらだ。この3者が道を誤らせたのだった。