【上昇気流】(2022年9月28日)

安倍晋三元首相の国葬で、献花台に献花する各国代表ら=27日午後、東京都千代田区の日本武道館(代表撮影)

安倍晋三元首相の国葬が、東京都千代田区の日本武道館で行われた。武道館とお堀を隔てた九段坂公園で一般献花が行われたので花を手向けてきた。10時前、東京メトロ半蔵門駅に着いたが、地上出口から既に2列の行列ができていた。

千鳥ケ淵から皇居の半蔵門を迂回(うかい)し、時に4列になって前の人との間を詰めるように歩き続け、済ませたのは正午ごろ。この間、迂回地点はさらに遠のいていたから、その後も数キロの列ができていたのではないか。

平日で年配の夫婦が目立ったが、学生や子供連れの家族にも会った。スーツケースを引き、話しぶりで地方からと思しき人たちもいた。凶弾に倒れたリーダーに対する哀悼の念。少しでも恩義に報いようとする声なき声、サイレントマジョリティーの姿だ。

国葬にもお国柄が出る。エリザベス英女王の国葬はウェストミンスター寺院で行われた。沿道で長い時間待ち、女王の棺(ひつぎ)を見送る人々には宗教的な熱意が感じられた。

一昨年に日本で封切られたスターリンの葬儀の記録映画「国葬」(セルゲイ・ロズニツァ監督)。一様に途方に暮れ、この世の終わりを見るように大仰に悲しむ人たち。その後、厳しい批判が始まる独裁者の葬儀だった。

一つ思った。武道館は国葬の2日前までイベントがあり、会場の準備期間は1日しかなく慌ただしかった。都心で、海外の要人数百人が一同に会して行事を執り行う適当な場所が他に見当たらないのだ。これは困る。