
社会保障の話題がマスコミにもしばしば出て国民的関心事になったのは、せいぜいここ30年だと思う。経済が伸びない中、高齢化が進み、増大する社会保障費を誰がどう負担していくのか、急に重い荷物がのしかかってきたという感が当時からあった。
しかも日本では、社会保障はどうあるべきかという議論が年金、医療、福祉など各分野でバラバラに論じられてきて、その制度の全体的な将来像がはっきりと見えてこないうらみがある。
そんな中、全世代型社会保障改革の議論を始めたのは安倍晋三政権の時だった。「子供たち、子育て世代、さらには現役世代まで広く安心を支えていく」ことなどを目指し、社会保障システム自体の改革に取り組むことになった。
引き継いだ岸田文雄首相は先日、約4カ月ぶりに開いた全世代型社会保障構築本部の会合で「子供・子育て支援の充実、医療・介護制度の改革、働き方に中立的な社会保障制度などの構築」に向けて議論を加速するよう求めた。
わが国の社会保障はもともと老後を見据えたものだったので、高齢者に手厚く、子育て世代などへの配慮が十分でないことが続いてきた。全世代に対する「公平、平等の原則」をどう反映させるか、改革は待ったなしだ。
社会保障だけの問題ではないが、日本社会には将来への不安があり、閉塞(へいそく)感が強まっている。国が社会保障にどこまで関与すべきか、公私の役割分担をきちんと設定しておかなければならない。



