【上昇気流】(2022年9月25日)

大雨の影響で損壊した静岡県浜松市の嘯月橋=24日午前(浜松市提供)

最近、台風の影響などで雨が降る日が多い。突然に曇り空からにわか雨が来て、傘の用意をしていないと濡(ぬ)れネズミになってしまうことがある。その上、秋の雨はかなり冷たい。

かつて「春雨じゃ、濡れて行こう」というセリフがあった。映画にもなった演劇の「月形半平太」(行友李風作)の主人公のセリフだった。月形半平太は、幕末の土佐藩の志士、武市半平太(瑞山)がモデルというが、確かに春の雨はどこか温かい感じがする。

雨に打たれるのも風情がある。それに比べると、秋の雨は冬の近さを感じて心理的にも寒くなる。先日、神田川沿いで鳥の鳴く声が聞こえた。

錯覚だろうと思っていると、激しい濁流の中を流れに逆らって鴨が数羽泳いでいた。鴨の家族なのだろうか、矢のように必死になって泳ぐ姿には思わず「頑張れ」と声を掛けたくなった。水流が激しいので、どうしても遅れる一羽が出てくる。流されそうになって、また群れに追い付く。その繰り返しだった。

川の流れは見た目と実際は大きな違いがある。江戸時代の俳人、松尾芭蕉にそのことを教えてくれる句がある。それは「奥の細道」で最上川のことを詠んだ「五月雨を集めて早し最上川」だ。初稿は「早し」ではなく「涼し」だった。

だが、最上川を川下りして、見た目とは違った流れの速さに驚いたのである。見るのと実際とではかなり差がある。川の恐ろしさはそこにある。そのことを肝に銘じたい。