
かつての刑事ドラマは「警察対犯人」という図式だった。それが近ごろは、警察内部が描かれることが多くなった。警察も人間社会には違いないから、対立や相克は当然ある。警察組織は面白いから描く価値があるのだろう。
警察は階級が大きな意味を持つ。警察以外でも、階級は軍隊にもある。大学では教授・准教授の区別がある。会社や役所も同じ。相撲界にも番付による厳格な序列がある。
軍隊同様、警察ははっきりした世界だ。時に隠蔽(いんぺい)をやってしまうこともあるが、その際警察は、一般企業以上にメディアなどで厳しい追及がなされる▼そうした緊張感も警察の面白さの理由だろう。警察組織の人間関係の方が、下手な犯人捜しよりはよほど面白い場合もあるのではないか。
それでも、ドラマであれ「警察24時」であれ、刑事・交通部門が描かれることが圧倒的に多い。警備・公安部門に言及することはほとんどない。人事や予算に関わる部門が話題になることもない。さまざまな事情があるのだろう。
そういえば、20年ぐらい前の刑事ドラマでは、取調室の机の上にはなぜか必ず電気スタンドが置かれていた。警察を扱った書籍などでは、しばしば「電気スタンドはおかしい」と書かれていたものだが、最近の刑事ドラマでは見られなくなった。犯人がガラス製品で刑事に襲い掛かる可能性を考えれば、机に電気スタンドなぞ置くはずがない。ドラマの質を高めるには、細部への配慮も重要だ。



