
ロシアのウクライナ侵攻の影響で、欧州ではエネルギーや食料自給対策が必須となって原発回帰が顕著なもようだ。日本も原発の再稼働を急ぐ方針だが、一方の食料自給問題は、なかなか一筋縄でいかないようだ。
政府は自給策として備蓄対象の食料の品目を拡大する考えで、米や小麦以外に大豆や他の作物の国内栽培を促す方針だ。農家が減少する中、米作りの担い手がさらに少なくなってしまうことにならないか。
わが国の米の自給率はほぼ100%で食料自給率に占める割合も大きい。しかし、その生産量はこの50年間に1200万㌧前後から約800万㌧に減り、その結果、食料自給率(カロリーベース)も約70%から40%程度まで低下してしまった。
つまり米の生産量が落ちることで、食料自給力は減少の一途をたどってきたという事実がある。日本にとって米作りは食料安全保障の要になっているのだ。
富山和子著『日本の米』(中公新書)で「日本列島とは……米作りを基盤にして築き上げた、土地と人との壮大なネットワーク」「今日なお米だけはどの県でも作っていることは、地方の自立が語られる今、何と僥倖であろうか」と、未来を見据えた米作りの取り組みが必要だと訴えている。
中長期的な視野に立った食料自給率向上への方策が大切で、それには米の多種多様な品種栽培の促進などのアイデアが欲しい。「(米を語ることは)日本人のアイデンティティを語ること」(富山氏)だ。



