
「名月や畳の上に松の影」(其角)。夕焼け前のやや青みを帯びた空に丸い月が白く見えた。昨日は中秋の名月だったが、気流子が見たのは満月になる直前。爆音が聞こえたので見上げると、ヘリコプターが月の上を飛んでいたのである。
ヘリコプターが月よりも高い高度を飛ぶように見えたのは錯覚だが、その取り合わせの妙に不思議な感動を覚えた。月に関する句では蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」が有名。菜の花と月の取り合わせは春の風景だが、秋の月ではやはりススキだろう。
ススキは都会に住んでいると目にする機会はほとんどない。この時期だけ、スーパーなどでススキと団子がセットで売られているのを見掛けるぐらい。ススキは「秋の七草」の一つにもなる。ほかに、オミナエシ、キキョウ、ナデシコ、フジバカマ、クズ、ハギがある。もともとは、万葉集の歌人、山上憶良が詠んだ和歌「萩の花尾花葛花なでしこの花おみなえしまた藤袴朝顔の花」にちなんでいる。
「尾花」とはススキのこと。ただ「キキョウ」だけは、憶良の和歌では「朝顔の花」となっていた。
これについては、実際はヒルガオやムクゲ、キキョウ、アサガオのいずれかではないかという諸説があり、最終的にはキキョウが有力とされるようになった経緯がある。
万葉集の時代から人々に愛(め)でられてきたススキは、どこにでもある草花だった。都会化とともに姿を見掛けなくなったのは寂しい。



