一時帰国した折、久しぶりに大阪に行って少し驚いたことがあった。所用を済ませ、新大阪駅まで車で送ってもらった時、間違ってタクシー乗り場の車寄せに止めて車から下りようとしたら、後ろのタクシーにクラクションを激しく鳴らされた。ほんの数秒の停車、東京でこんなことはあまりない。何とせっかちなことかと思うも、人間臭い一面も感じた。嫌なことは嫌とストレートに表現するのだから。
この出来事で思い出したのが、韓国第二の都市・釜山での体験だった。市内で車を運転し、車線変更を試みようとウィンカーを点滅させたが、隣の車線を走っていた車がどんどん車間距離を縮め、一向に譲ってくれない。ついに車線変更できず、交差点で右折できないまま直進するしかなかった。助手席の友人いわく「釜山の運転は譲らなくて有名」。ソウルで慣らし、少しは韓国での運転に自信があったが、釜山で脆(もろ)くも打ち砕かれた。
釜山人はどこか大阪人と似ている。大阪在来線車内の賑(にぎ)やかさに驚いたことがあったが、釜山の地下鉄車内も夜は騒々しいくらいだった。釜山の地理に不慣れで下車する駅が分からず、到着後慌てて車中の人混みをかき分け降りようとすると、その様子を見ていた男性から「なんであらかじめ準備しないの?」と大声で言われたこともあった。思ったことが口を突いて出る、裏表のなさが不思議に小気味よかった。近年、人間臭さに触れづらくなったせいだろうか。(U)



