【東風西風】「若者の街」だった銀座

神保町シアターより
東京・神田の名画座、神保町シアターで「映画で銀ぶら――銀幕の銀座」と銘打って、銀座を舞台にした映画の特集をやった。戦後間もなくの白黒映画から始まりほとんどが昭和の作品だ。 成瀬巳喜男監督「銀座化粧」(1951年、田中絹代主演)、同じく成瀬の「女が階段を上る時」(60年、高峰秀子)、大岡昇平の小説を川島雄三が監督した「花影」(61年、池内淳子)などを観(み)たが、どれも面白かった。主演女優それぞれの魅力がよく引き出された映画だった。

山内賢、和泉雅子が共演し主題歌が大ヒットした「二人の銀座」(67年)も上映リストにあったが、観なかった。結果的に観たのは、どれもバーの雇われマダムが主人公だった。

三島由紀夫が昭和36年「銀座百点」に「青春の町『銀座』」というエッセーを寄せている。いわく「こんなに若々しい男女で溢れた町は、(もちろん時刻にもよるが)、世界中にないのではないか」。

かつて銀座は若者の街、より正確に言うと三島が断っているように、夜は大人、昼は若者の街だった。しかし今は、昼でも若者の姿は少なく、高級な大人の街となり、コロナ以前は外国人観光客の爆買いの町だった。

銀座から若者が消えたのは、いつごろからだろうか。若者文化、経済格差いわゆる中流の崩壊、海外有名ブランド店の出店などとの絡みで見ていくと面白そうだ。銀座から日本と世界が見える。
(晋)