ブラジルでは、アマゾン熱帯雨林内で消息を絶った英国人記者とブラジル人先住民研究家のニュースが世間を騒がしている。違法採掘業者から脅迫を受けていたとの報道もあり、所持品が見つかったことなどからも、すでに死亡している可能性が高い。記者のフィリップス氏は、欧米主要紙に10年以上寄稿してきたベテラン。アマゾン熱帯雨林保護に関する出版も予定していた。
南米の森林は、まさに利権の塊。大金が埋まる土地の前には、人の命などあってないようなものだ。そのことを初めて認識したのが、ブラジルの隣国パラグアイで熱帯雨林の違法開発取材をした時のことだ。
現地ガイドに従ってパラグアイ側のパンタナールに入り、熱帯雨林を歩き続けていると、いきなり、視界の前にブルドーザーでなぎ倒された地平線まで続く道路が現れた。正式な書類のない違法開発だ。
開発業者は自動小銃で武装しているので、姿が見えたらすぐに逃げるようにと警告された。誰もいない大自然の中、人が消えても誰も気付かないと思うと体が震えた。
違法開発業者の多くはブラジルの投資家で、弁護士を使って偽の土地権利書まで作り上げる。場合によっては、裁判官や知事クラスの政治家まで巻き込み、土地利権をめぐるカルテルを形成するというのだ。数千億円以上の利権が渦巻く南米の森林。日常的な道徳観など消し飛んでしまう。
人類の遺産とも言える南米の森林だが、その保護を考えると絶望的になることがある。熱帯雨林を保護することが、開発よりも利益になるという、夢物語のようだが、これまでの常識を覆すような画期的なアイデアが出てこない限り、アマゾン熱帯雨林をはじめとする森林保護は難しいのではないかと思うこの頃だ。(S)



