一人ひとりに配慮した柔軟な学びを 宮城県仙台市「不登校特例校」が来月開校

「ろりぽっぷ小学校」の授業イメージ(ろりぽっぷ学園による紹介動画から)

宮城県仙台市では、不登校の子供に配慮したカリキュラムを編成できる「不登校特例校」が来月、初めて開校する。「不登校特例校」は、子供一人ひとりの実情に配慮して少人数指導や習熟度別の指導など柔軟なカリキュラムを編成できる。県内では去年4月、富谷市で開校したのに続き、今年4月に仙台市と白石市でも開校する。(市原幸彦)

自分で決めるカリキュラム選択

“転校”制度で様々な負担を軽減

この不登校特例校の名は「ろりぽっぷ小学校」。NPOやボランティア団体などが運営しているフリースクールとは違って、通学する場合は転校の手続きが必要で、カリキュラムを履修すれば、卒業証書を得ることができる。

県内にこうした不登校特例校が増えているのは、不登校の児童・生徒の割合が増えているからだ。県の小中学校の1000人当たりの不登校児童の数は、30・3人と全国でも2番目の多さだ。また、仙台市のいじめの認知件数は、全国の政令市の中で2番目に多くなっている。

不登校特例校が開校する旧坪沼小学校

同校が開校するのは、2015年に閉校となった仙台市太白区の旧坪沼小学校で、現在は、昨年9月から市内の学校法人「ろりぽっぷ学園」が運営するフリースクールとして使用されている。通っているのは、いじめや集団教育での“つまずき”などを理由に不登校になった子供たちで、小中学生合わせておよそ30人。

通常の学校では授業時間であっても、サッカーに熱中したり、ステージでピアノの練習に集中したり、教室で黙々と彫刻に取り組んだり、とさまざま。子供一人ひとりが学習を選択することができる点や遊びを通して学べる点など、学校側がそれぞれの学習計画に柔軟に対応してくれる。

学校が開いているのは火水木の週3日間。そのうち、何日登校するかや習字や運動といった活動内容から、好きなものを自分で考えて決められる。フリースクールに通うことで、本来在籍している学校の授業に出席したと見なされる。

フリースクールは子供たちにとって、よい居場所になっているが、限界もあるという。同学園によれば「今いる在籍校が、その子の居場所というか、名前がそちらにあって、違う場所のこちらに来る」という形だ。

また、現在のフリースクールのシステムでは、保護者とフリースクール側に大きな負担が掛かる。保護者にとっての負担は費用だ。授業料や備品など、在籍校とフリースクールの2カ所分の支払いが必要になってしまう。

フリースクール側の負担は、学校との連携だ。出席認定のためには在籍校へ授業内容の報告が必要で、各学校や保護者の要望に合わせて書面の作成や学校との仲介を行うことに、かなりの手間と時間がかかる。

不登校特例校は、学校教育法に定められた「学校」のため、転校して在籍するため、手間が省ける。そしてカリキュラムが充実し、履修すれば卒業証書を得ることができる。「公立の小学校で30日以上欠席していたり、不登校の傾向があるというお子さんが、校長先生から了承を得てこちらに転校するという形になります」(同学園)

4月からは、フリースクールからそのまま特例校に転校させる。今スタッフたちは、新たな開校を控え、フリースクール以上の学びの環境を子供たちに提供したいと考えている。「大人がどれくらい頑張れるか。子供たちには、今しかない。子供たちの未来のために、子供たちの今のために私たちはやりたいなと思っています」と同学園のスタッフ。

同校には、教師を8人配置し一人ひとりの興味や関心に寄り添った指導をしながら、自然豊かな環境での体験活動や地域住民との交流を通し、子供たちが喜んで来たくなる学校を目指す。不登校特例校からは、もともと通っていた学校に復帰もできるため「仙台市との連携が重要」でもある。

一方、課題もある。この特例校は私立学校となるため、保護者の経済的負担も大きくなることだ。そのため同学園は、家庭への支援などを求めた要望書を市に提出した。市は「国も教育機会確保法の中で財政支援についてうたっていて、国の方でも検討しているとのこと。情報を挙げて働き掛けていきたい」としている。