岩手県立水沢商業高校4生徒が実証実験
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アパレル製品の年間国内供給量約29億点に対して、半数以上の約15億点が売れ残り廃棄されているといわれ、社会問題となっている。岩手県立水沢商業高校商業科に通う生徒らが、県南部の奥州市(人口11万人)の中心に当たる水沢駅前の商店街の空き店舗を借りて、捨てられる服を低価格で販売し、寂れた街の活性化とアパレルの廃棄問題を同時に解決しようと取り組んだ。後押しした企業がそれを元に新たな教育事業を展開し始めたり、店を引き継ぐ人が現れたりするなど、取り組みは実を結んでいる。(市原幸彦)
来店客は豊富な品揃え・接客に満足
支援企業が新たな教育事業展開も
企画したのは商業研究グループの大山あかりさん、小野寺美優さん、小竹美貴さん、渡辺柊さんの水沢商業高校3年生の4人組だ。1年生の頃からアパレル廃棄問題と地域活性化に着目し、研究・実践を重ね、その集大成として水沢駅前にアパレルオフプライスストア「OASIS(オアシス)」を昨年10月8日にオープンした。
彼女たちによる奥州市民1240人を対象にした調査結果によると、奥州市内はファストファッションを取り扱う店舗が中心となっており、アパレルブランド衣料品の購入は市外のショッピングモールとネットショッピングに偏っていた。また、衣料品の購買環境への満足度は、約8割が満足していないと回答。さらに、アパレルショップがあれば利用するかという問いに、約9割が利用する可能性があるが、半数以上がブランド品にこだわりがないと回答した。

そこに商機があると感じた4人は、一昨年5月に、在庫処分業を中心に展開するshoichi(ショーイチ、本社大阪市)の山本昌一社長に、在庫の服を提供してもらえないかと依頼した。彼女たちの熱心さに応えた山本さんの後押しで、10年間空いていた元着物屋で店を開くことにした。壁を全部白く塗ってもらい、清潔感を出した。
昨年9月下旬、大阪の山本さんの会社の倉庫「ショーイチ物流倉庫」に行った。彼女たちはよく知るブランドも大量に売れ残っていたことに驚きを隠せなかったという。若者から高齢者まで幅広い客層に対応するために婦人服などおよそ700点をそろえ、一つ一つブランドのタグも切った。
開店当日には多くの客が押し寄せた。地元のお客さん(60代)は「なかなか地元でいい洋服店がない。こういう店ができてくるとありがたい。毎月来たい」。20代の女性は「思っていたより、いろいろな種類の服があって見ていて楽しい」。また「接客も上手で、値段も満足で毎月通いたい」など満足している声が多かった。
販売した生徒たちからは「アパレルの余剰・廃棄問題を知るきっかけにしてもらい、地域に活気があふれていけば」(渡辺さん)、「ファストファッションでもブランドショップでもない新ジャンルの店としてやっていくことで、水沢の新たな魅力にもつながるのでは」(小野寺さん)などの感想が寄せられた。インターネットのフリーマーケットアプリによる販売も同時進行して、収益安定化を図った。「店舗は売り上げも好調で、ビジネスとして成功している」(shoichiホームページ、山本社長)。
基本的に金曜日午後4時から同6時、土日祝日が午前10時から午後4時まで営業した。開店当日はオープンイベントを開催。景品が当たるくじ引きのほか、購入者全員に次回使えるクーポンを配った。
このチームは、第30回全国高校生徒商業研究発表大会(昨年11月16、17日、島根県松江市)で総合2位の優秀賞に輝いた。指導した川原佳訓教諭は「課題設定以来、このレベルまで活動を広げたのは素晴らしい。努力に値する結果だった」とたたえている。
ショーイチはこれを期に、起業家教育のためのアパレル商品提供サービスを開始した。小中高および専門学校向けで▼「本物のお店屋さん」を通して子供たちにワクワクと創造力を▼廃棄問題を通してSDGs教育▼商品販売を全面サポート▼ショーイチ倉庫の見学ーーなどを目的とし、当社提供商品を活用してビジネスを行ってもらう。
店は12月29日で閉店したが、地域のお客さんからも、また生徒本人たちも何とか「OASIS」を残したいという気持ちから、ショーイチでは、継承者を募集。現在、盛岡の人が2月から営業を再開している(金土日のみ)。



