「子ども食堂」コロナ禍でひとり親支援に奮闘

宮城県岩沼市の市民団体「いわぬま・こども食堂+」

コロナ禍で、地域の子供に無料や低額で食事を提供する「子ども食堂」が増えている。諸事情で休止するケースもあるものの、全国で6000カ所以上あるとされる。宮城県岩沼市を中心にひとり親支援を行う市民団体「いわぬま・こども食堂+(プラス)」は平成30年の活動開始以来、子供と地域住民が共に食卓を囲み、心もおなかも満たすコミュニケーションの場として、持続可能な形で継続していくことを目指している。(市原幸彦)


居場所づくりに「共食」の場を提供、工夫しながら継続

厚生労働省の平成30年の国民生活基礎調査によれば「17歳以下の7人に1人が相対的貧困であり、ひとり親世帯の貧困率は2人に1人」という。相対的貧困とは最低限の暮らしは確保できているものの、平均生活水準より所得が少ない状態のこと。

「子ども食堂」コロナ禍でひとり親支援に奮闘
ひとり親家庭と地域住民が参加したクリスマス会。昨年12月18日=いわぬま・こども食堂+提供

子ども食堂は、誰かと一緒に食事をする「共食」が難しい子供に共食の場を確保し、栄養のある食事やだんらんを提供するコミュニティーの場だ。「いわぬま・こども食堂+」ではコロナ禍の中、集まっての食事はせず、食材や弁当を配るパントリー形式で、工夫しながら地域ぐるみの支援を継続している。「最近は派遣切りに遭った人、時短で収入が減り困っている人などが目立つ」。仲間と食堂を主宰する坂本久子さん(75)は語る。未就学児~高校生、近隣の高齢者・障害のある方などが対象で、参加費は1回につき子供100円、大人300円。毎月第4木曜日、みやぎ生協岩沼店2階集会室で行う。

昨年12月18日、クリスマス会「歯のおはなし&クリスマスコンサート」を市内のコミュニティーセンターで開催。歯科衛生士による歯の話、同市で活動するウインドアンサンブル・ブレーメンの演奏の後、クリスマスプレゼント。一緒にほっとするひとときを楽しんだ。終了後には、仙台大学(柴田町)の学生たちが用意したお菓子や手作り弁当が配布された。

地域と連携し食品を配布、着実に広がる支援の「輪」

通常、配布する食品は主に地元の企業や農家、NPO法人などから提供され、団体の活動への共感による支援で成り立っている。大手通販サイト「アマゾン」の「みんなで応援」プログラムは一昨年末から始まっており、クリスマス会の際には、同食堂にも全国からプレゼントが送られた。

昨年3月、県内の学校が臨時休校になった時には県内の給食センターと連携し、給食で提供できなくなった冷凍食品を譲り受け、無料配布した。その際も冷凍倉庫や運搬用トラックを地元企業から借りるなど、地域との連携を図り、支援の輪を着実に広げている。
広報活動として、SNS(フェィスブック、ツイッターなど)を利用するほか、チラシ・ポスターを作成し児童館や保育所などに配布。また、見学者を積極的に受け入れたり、市社会福祉協議会との密接な連携を進める中で、他の子育てサークルとも緩やかにつながり始めた。

「SNSでの発信により閲覧回数も増えているが、コツコツと施設を回りチラシを置いていくことに効果があることが分かってきた。児童館の先生が声掛けしてくれたなど、SNSよりも口コミで誘われて利用している方の数の方が多い。気になった人がその方に声を掛けることこそ大事だと思いました」(坂本さん)という。

悩みを聞く中で課題を発見、継続していくことが一番大切

一方、利用者には感想をメールでもお願いしているが、スタッフを信頼し、自身のつらさを伝えてくる人もいる。パントリーから受け取ったものを、つながれない人に分けている人もいることなど、会場のやりとりだけでは分からないことも教えてくれるそうだ。本音を吐露して、弱音を言ってもいい場所だと思ってもらえるよう配慮や工夫を重ねている。

ひとり親家庭の悩みを活動を通じ聞く中で、今までとは違う課題も見えてきた。「新しい支援の形を探っていかなければならない」と坂本さん。例えば食事と同様に、洗剤やティッシュといった日用品の家計負担も大きいことが挙げられる。日用品の継続的な支援はまだまだ足りないのが現状だ。

今後の展望について坂本さんは「この活動は継続していくことが一番大切だと思っている。地域のつながりを大事にし、運営を担っていく人材の育成など、課題はたくさんあるが、少しずつ、柔軟に、楽しんで取り組んでいきたい」と語っている。