【上昇気流】(2023年4月29日)

昭和の日

きょうは「昭和の日」である。小さな声でそっと「昭和」と唱えてみると、喜怒哀楽が幾重にも響いてくるような気がする。

「昭和は遠くなりにけり」と思う人がいる一方で「今なお昭和に生きている」と公言する人もいる。昭和とは不思議な御代である。

始まりの昭和元年は7日しかなかった。大正天皇が崩御されたのは大正15年12月25日のこと。その日のうちに新元号「昭和」が公布され、翌2年は「諒闇(りょうあん)のうちに新年は明けた」と言い表された(『昭和史事典』講談社)。諒闇とは天子が父母の喪に服する期間をいう。

終わりの昭和64年も7日しかなかった。昭和天皇が崩御されたのは1月7日で、翌8日に「平成」と改元された。始まりと終わりの年がそろって7日間とは、何とも不思議な縁である。昭和に生まれた人もまた、何かの縁で結ばれているように思えてくる。

元来は天皇誕生日であったが、昭和を忌み嫌う人が一部にいて、取って付けたような「みどりの日」という祝日にされた後、平成19年から晴れて昭和の日となった。「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」という趣旨である。

気流子は昭和天皇の「終戦の詔書(しょうしょ)」を思い浮かべる。現代語訳でいえば「総力を将来の建設のために傾け、道義心と志操を堅く持って、日本の栄光を再び輝かせるよう期すべきである」と語り掛けておられるからだ。昭和の宿題は残されたままのように思う。