【上昇気流】(2023年4月22日)

東京

「経営の神様」と言われた実業家、松下幸之助さんは半世紀ほど前に「置州簡県論」を提唱した。全国に独立性の強い州を置いて県を手軽なものにする構想だ。強調したのは各州に「首都」を設けることだった。

日本の首都は東京だけなので全国から人が集まり一極集中する。ところが、各州に首都を設けると、州の事柄は全てそこで処置するので、東京に極端に人は集まらない。各州が主体的に経営すれば、例えば北海道は北欧のような豊かな国になるはずだ、と松下さんは考えた。

これを受け継いで「一村一品運動」の提唱者で知られた平松守彦元大分県知事は「日本合州国」論を唱えた。青森、秋田、岩手の北東北3県の知事が3県合併構想を打ち上げたこともある(2002年)。だが、昨今は道州制の影は薄い。

都道府県は国と市町村の間の「中2階」と揶揄(やゆ)される。神奈川県がかつて県下の市町村にアンケートを行ったところ「県は中間マージンを取る問屋」「県は弱小自治体のための代官」といった批判にさらされた。とは言え「簡県」はままならない。

市町村では「平成の大合併」が進んだが、逆に行政が住民から遠のいたとの声もある。ダイナミックな地方改革論は影を潜め、大阪の「都構想」も頓挫した。地方の活力が薄れているように思う。

松下さんが言いたかったのは各州の「善政競争」だ。そんな意気込みが地方政治家にあるだろうか。統一地方選はそこが問われる。