【社説】北ミサイル 核シェルターの整備を急げ

北朝鮮による弾道ミサイル 

北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイルを発射した。日本政府は北海道南西部の陸地に落下する恐れがあるとし、全国瞬時警報システム(Jアラート)で避難を呼び掛けたが、北海道周辺への落下はなくなったとして解除した。安全確保のため、正確性よりも迅速性を優先し、Jアラートを通じて警報を発令した判断は正しい。ただ今回のケースをきちんと検証し、正確性の向上にも努めてほしい。

固体燃料式のICBM

北朝鮮の国営メディアによれば、ミサイルは固体燃料式の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」だった。固体燃料は、注入に時間がかかる液体燃料に比べ短時間で発射でき、探知されにくい特徴がある。

昨年末の朝鮮労働党中央委員会総会で金正恩総書記は「迅速な核反撃能力を使命とする」新たなICBMの開発を表明。これは固体燃料式を指すとみられていた。正恩氏は今回の発射について「核反撃態勢の実効性を急激に進展させ、攻勢的な軍事戦略の実用性を変革させる」と評価したという。

北朝鮮の弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会決議に違反する暴挙だ。ましてや日本領土に落下すれば、甚大な被害が生じることになり、到底容認できるものではない。ただ北朝鮮のミサイル技術は進歩を続けており、脅威は増大しつつあると言えよう。日本は反撃能力の保有を急ぐとともに米韓両国との連携を強化する必要がある。

一方、海上保安庁はミサイルが「ロフテッド軌道」とみられる高角度で発射されたことを受け、13日午前7時55分にJアラート、同56分に緊急情報ネットワークシステム「エムネット」を通じて「8時ごろ、北海道周辺に落下するとみられる」とした。しかし、午前8時20分に「落下する可能性がなくなった」と伝えた。

防衛省は発射を探知したが、直後にミサイルがレーダーから消失。日本の領域と排他的経済水域(EEZ)への飛来や、被害は確認されていない。岸田文雄首相はJアラートを「国民の安全を最優先するとの観点から発出した」と説明。約20分後の変更については「わが国領域に落下する可能性がなくなったので、改めて情報提供を行った」と述べた。

自然災害の場合と同じで、たとえ空振りに終わってもJアラートを発令したことは妥当だ。ただ問題は、避難場所である。東京や大阪などでは、国民保護法に基づき地下鉄の駅舎や地下街などが緊急一時避難施設に指定されている。しかし収容できる人数は限られており、核兵器が使用された時には放射線も十分に防げない。

強い危機感持って対処を

スイスやイスラエルは公共・家庭用ともに核シェルター設置が義務付けられている。これに対し、日本ではほとんど普及していないのが実情だ。

首相は「諸外国の調査を行うなどし、必要な機能や課題について検討を進めている」としているが、北朝鮮や中国の脅威にさらされる中、核シェルターの整備は喫緊の課題である。政府は強い危機感を持って対処を急がなければならない。