
品質の良さが強みに
このところの物価高で困窮しているのは消費者だけではない。資財や燃料価格の高騰で生産コストの上昇を強いられる生産者も厳しい状況に置かれている。とりわけ、農業を取り巻く環境は深刻だ。コメ農家に至っては米価低迷と肥料高騰のダブルパンチを食らい、経営が立ち行かないと離農するケースも増えている。それでなくとも農業従事者の高齢化、後継者不足といった問題を抱えるのがわが国の農業だ。
そうした中で週刊ダイヤモンド(4月8日号)は元気な農家に焦点を当て、「儲かる農業2023」と題して日本農業の活路を紹介している。日本の農業の強みは、何といっても“おいしさ”を含めて品質の良さである。海外の日本の農産品・食品への関心は年々高まっており、輸出額も22年では8000億円を超える。ダイヤモンドはこうした海外を視野に入れた農家をまず取り上げる。
例えば、リンゴの輸出を手掛ける株式会社日本農業(本社・東京都品川区)の昨年の出荷量は3000㌧(輸出額9億円)、前年の2倍増を記録した。同社は青果物の貿易会社ファーマインドと合弁でジャパンアップルを立ち上げ、25年に100㌶規模のリンゴ農場を開設する予定。26年には6000㌧の輸出量を見込んでいる。
また、サツマイモの輸出で実績のある宮崎県のくしまアオイファームは、サツマイモの生産をメインに年商19億円を上げる。創業は13年。10年間で売上高は40倍に伸びたという。輸出の割合は同社売上高構成比の25%を占める。大きく伸ばした要因としては東京や大阪といった運送コストの高い国内の大都市圏だけにとどめるのではなく、距離的にも近い台湾や香港など東南アジアに拡大していった。不利な環境を不利と考えず有利な環境を見いだしていった点が大きい。



