【上昇気流】(2023年4月8日)

演説を聞く有権者ら 3月26日、大阪市内

米オハイオ州のデイトン市は、大洪水で市がほとんど水没する大惨事に遭い、1914年にシティー・マネジャー制を導入した。議会が1人の支配人を選任し、行政部門の総責任者に据えて見事に復興させた。これに倣って全米各市で採り入れられた。

江戸期の日本にもシティー・マネジャーがいた。小田原藩は二宮尊徳に下野桜町を領した分家、宇津4000石の再建を任せ、その実績を買って本藩の農政指導も委ね藩政再建を果たした。

松代藩では藩主、真田幸弘に抜擢(ばってき)された恩田杢が藩の財政状況を領民に知らせ、窮乏と負担の生の声を聞いて合意の上で藩政改革を実現させた。その事績を綴(つづ)った『日暮硯』は武士のみならず庶民にも愛読された。

各藩は幕府の睨(にら)みに耐えつつ、自活の道を開かねば藩政は立ち行かず、藩経営が破綻すれば「取り潰(つぶ)し」の憂き目に遭った。江戸版シティー・マネジャーは背水の陣で臨んだのである。米沢藩の改革を行った藩主の上杉鷹山は「成せば成る 成さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」の言葉を遺(のこ)している。

令和の時代はどうか。高齢化と人口減によって取り潰されそうな「限界自治体」が増え続けている。2040年には全国の半数の自治体が消滅する恐れがあるとの試算もあるほどだ。「どうする家康」ならぬ「どうする自治体」である。

明日は統一地方選挙前半戦の投票日。有権者の皆さま、しかと考えて1票を投じられたい。