立憲民主党の小西洋之参院議員が、衆院憲法審査会の毎週開催について「サルのやること」などと発言した。
70年以上前に施行された日本国憲法は、現在の内外情勢に対処するための改正が喫緊の課題となっている。そのための論議を貶める発言は、国会議員としての資質が問われる言語道断の言動だと言わざるを得ない。
メディアへの圧力も
小西氏は「憲法を真面目に議論しようとしたら、毎週開催なんてできるわけない」と主張。「何も考えていない人たち、蛮族の行為だ。野蛮だ」とも表現した。
与野党の反発に加えて立民内でも「不適切」「不快」と批判が拡大したため、小西氏は謝罪して発言を撤回した。ところが「(取材は)オフレコと理解していた」などと説明。「サルは差別発言になるのかな」と述べたことを理由に「撤回・修正の意思表示をした」と主張し、「前半だけ切り取られ報道された」と不満を示した。
だが「サル」発言はオフレコであれば許されるというものではない。2月には、オフレコで性的少数者(LGBTなど)への差別発言を行った首相秘書官が更迭されている。
さらに小西氏は発言を報じたフジテレビなどに対し、ツイッターに「報道倫理に反して攻撃的な報道を行うのはおよそ言論報道機関とは言えない。元(総務省)放送政策課課長補佐にけんかを売るとはいい度胸だ」などと投稿している。
小西氏は放送法の総務省文書を入手し、今国会で「報道への圧力」を糾弾するキャンペーンの先頭に立ってきたが、この投稿はメディアへの圧力以外の何物でもあるまい。どちらが野蛮なのかと言いたくなる。キャンペーンは報道の自由を守ることが目的ではなく、政権のあら探しにすぎないと指摘されても仕方がない。
「サル」発言を受け、立民は小西氏を参院憲法審の野党筆頭幹事から更迭した。しかし、その後も小西氏は「産経記事は名誉毀損」「朝日の政治部はここまで劣化しているのか」などとツイッターでメディア批判を繰り返している。他党からは追加処分を求める声が上がっているが、立民執行部は及び腰だ。身内に甘い姿勢では国民の支持を得られず、政権批判にも力が入らないだろう。
憲法論議を揶揄した小西氏の言動に、憲法改正に慎重な立民の姿勢が影響したとすれば残念だ。覇権主義的な動きを強める中国やウクライナ侵略を続けるロシア、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威が増大し、わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、憲法9条の改正は急務である。新型コロナウイルス感染拡大の教訓を生かす上で、緊急事態条項の創設も大きな課題だと言える。
国家と国民守る改憲案を
自民、公明の連立与党と日本維新の会、国民民主党の「改憲勢力」は現在、衆参両院で改憲発議に必要な全議席の3分の2以上を占めている。
野党第1党の立民は改憲への消極姿勢を改め、国家と国民を守るための改正原案を発議できるような論議を行うべきだ。



