
犯罪捜査では現場の遺留品などに付着したDNAから犯人を特定するDNA鑑定が、必要不可欠な技術となっている。指紋鑑定より精度が高く、人間の体液中のDNAがその個人を特定するからだ。
しかし、このDNA鑑定を生物一般に応用しようとすると、ごく一部で成功を収めているにすぎない。生物はあまりに多種だからだ。今回、沖縄科学技術大学院大などのチームは、サンゴの種類を大まかに調べる技術を開発、その論文が英王立協会紀要の電子版に掲載された。
生物本体を離れ、土壌や水などのさまざまな環境の中から採取されるDNAは「環境DNA」と呼ばれる。同チームは、海面付近に浮遊しているサンゴの粘液(環境DNA)を解析するだけで判別することに成功した。
何がすごいか? 将来、環境DNAによる鑑定の方法が確立すれば、その環境下の生物だけでなく、過去に生息していた生物を網羅的に特定できたり、ある種が生息しているかどうかを判定できたりする可能性が出てくる。
微生物のDNAがその対象になれば、人間を取り巻く階層的な生物世界のありさまが一気に明らかになるだろう。人間は自然界を格段によく知り、管理できるようになるわけだ。
DNAではないが、探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星「りゅうぐう」の砂などの試料から、RNA(リボ核酸)を構成する塩基の一つが見つかった。こちらは人間と宇宙との関係のさらなる追究が可能だ。



