【社説】露大統領に逮捕状 戦争犯罪に法の裁きを下せ

プーチン大統領=2023年2月21日(UPI)

国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は、ロシアが侵略したウクライナの占領地からの違法な子供らの連れ去りに関与したとして、戦争犯罪の疑いでロシアのプーチン大統領に逮捕状を出した。

ロシアの侵略は明白な国際法違反であり、侵略とこれに伴う戦争犯罪についてプーチン氏の法的責任が問われなければならない。

侵略で子供連れ去り

ICCは声明で「プーチン氏が個人的に刑事責任を負うと信じるに足る合理的な根拠がある」と強調。カーン主任検察官は、孤児院や児童養護施設から少なくとも数百人の子供たちが連れ去られた実態を確認したと表明した上で「子供たちが戦利品のように扱われることは許されない」と述べた。

ウクライナ政府の集計によると、ロシアによる1万6226人の子供の強制移送が確認され、このうちウクライナに戻ってきたのは308人だけとなっている。米エール大の研究チームが2月に公表した報告書では、ロシアが移送した子供の一部に親ロシアの価値観を養う「再教育」を施し、軍事訓練も行っているとしている。

弱者である子供たちを強制的に連れ去ることは実に卑劣であり、ウクライナの未来に悪影響を及ぼしかねない。ICCは、市民の不法移送はICCの設立を定めたローマ規程に抵触し、プーチン氏は「上位責任者」であると指摘した。

現状では、ICC設立条約の締約国ではないロシアが身柄引き渡しに応じる見込みはなく、プーチン氏の逮捕は困難だ。ただプーチン氏がICC加盟国に渡航すれば拘束される可能性もあり、外交上の制約となる。

しかし、加盟国でも身柄拘束を行わないケースもある。かつてスーダンのダルフール紛争を巡って逮捕状が出されたバシル大統領(当時)に対し、友好国の加盟国は逮捕状の執行を見送り続けた。ICCのホフマンスキ所長は「逮捕状の執行には国際協力が必要だ」と訴えた。「法の支配」に基づく対応を国際社会に求めたい。

ロシアによる戦争犯罪は子供の連れ去りだけではない。ロシア軍はウクライナで多くの民間人を虐殺した。ICCは侵略開始直後から戦争犯罪を捜査しており、プーチン氏は他の容疑でも責任を問われる見通しだ。人道に対する罪を不問に付すことがあってはならない。プーチン氏に法の裁きを下すべきだ。

プーチン氏をすぐに逮捕できなくても、ICCは徹底的な捜査でプーチン政権による残虐行為の証拠を積み重ねていく必要がある。セルビアのミロシェビッチ元大統領のように、国家元首が辞任後、特別法廷で最終的に訴追された事例もある。

民主主義国は圧力強化を

ウクライナのゼレンスキー大統領は、プーチン氏に逮捕状が出されたことについて「歴史的な決定だ。テロ国家の指導者らが公式に戦争犯罪の容疑者となった」と述べた。

日本はウクライナへの支援を強化するとともに、欧米をはじめとする民主主義国と連携し、ロシアへの圧力を強めていかなければならない。